精神疾患

○ジェフリー・フェファー著 村井章子訳(2021)『社員が病む職場、幸せになる職場』日経ビジネス人文庫
【初級。進んでいると思ったアメリカの仕事の実態が分かります】
 「社会的公害」という言葉。知りませんでした。労働環境の悪さを指した言葉のようです。新しい工場を作るために地域住民に対して説明会を開いて環境規制上問題ないことを一生懸命宣伝するけど、労働環境が悪いことはあまり公表されません。
 本書を読むとレイチェルカーソンの『沈黙の春』やマルクスの『資本論』の労働日の章を思い出しました。悪い労働環境の現代版だと思いました。これらとの違いは、改善の方法も記載されていることでしょうか。
 基本的にアメリカの労働環境を延べ、データも提示しています。参照するデータが多いので、詳細は参考文献ってことになりますが。国際比較もほとんどヨーロッパが対象で日本の登場は少ないです。日本ってそんな存在なのかなとも思いました。
 過重な時間外勤務とかしていませんか?長時間労働は美徳ではありません。よりよい労働環境を目指して頑張りましょう。あっ、訳本ですが、きれいに訳され、読みやすいです。(2025/06/20)

○田村倫世(2024)『今どき会社がうまくいく精神障害者雇用』みらいパブリッシング
【初級。働きやすい職場を考えるその2。精神障害者雇用は働きやすい職場作り】
 私の会社にも精神障害者がいます。あっそう言えば私も精神障害者だった。衛生管理者は障害者対応で手一杯で、予防まで手が回っていません。総務も新たな精神障害者の発生を予防することに失敗しています。
 本書は、障害者雇用に関する会社の立場と精神障害者の対応する社員との両者の立場を考えて作られており、成功事例、失敗事例を著者の経験を元に分かりやすく説明しています。モニタリング→声かけ→調整の繰り返しと会社の柔軟性が必要ですね。この循環は何も精神障害者だけではなく健常者へも必要な対応だと指摘しています。個性の見極めもね。詳細は読んでね。
 私も障害の認定を受ける前は、総務に勤務条件について必要な対応を要求しましたが、顧みられることはありませんでした。反省の様子は見られません。
 私の会社は障害者を集めた部署がありますが、障害者同士の意思疎通のすれ違い(要はケンカ寸前までいったり、言われた方が一方的に悩んだり)と他の部署からの仕事の切り出しに問題があります。これらの点については次作かな?週に7回事件が起こります。
 私にとって勤務しやすい状況はいつ到来するのかしら?(2025/01/16)

○佐藤光展(2024)『心の病気はどう治す?』講談社現代新書
【初級。ジャーナリストゆえ、分かりやすいことを配慮した本です】
 心の病って何でしょうね。うつ病と診断されたら、うつ病でしょうか?実はその根っこに発達障害があって、なにかをきっかけにうつ病を発症したのかもしれません。本書を読むと自分は発達障害が疑われるうつ病なのかもしれないと思いました。
 よくある本として「うつ病は心の病だから薬物治療は止めるべきだ」というような主張はしていません。正しく判断されれば投薬を勧めています。ただその前に立ち止まり、その人の生い立ち、人間関係、その人の置かれている環境にもっと目を向けるべきであるとしています。現在の日本の医療体制はそのようにできていないし、医療費の節約にもつながるとしています。
 医療ジャーナリストからの視点で書かれており、難しい専門用語は少ししかありません。とても読みやすい本です。(2024/05/05)

○奥田弘美(2021)『会社がしんどいをなくす本』日経BP
【初級。お仕事を始めて、精神科・心療内科にお世話になる前に読みたい本】
 まぁ、すでに病んでしまっている私からすれば「そうよね~(^_^;)」、という内容です。心の病は、本格的にダウンしてからは、回復が遅くなるモノ。早めの対応が必要です。本書は、実際に産業医としての経験を元に、様々なケース、年代で心の病(または心の病モドキ)を描いています。同調圧力!日本は強いですよね。強烈な成果主義も襲ってきます。まずは睡眠の確保。この本は、病んでしまう前に読んでおきたい本です。(2022/06/06)

○五十嵐良雄監修(2014)『うつ病・躁うつ病で「休職」「復職」した人の気持ちがわかる本』
 講談社
【初級。うつ病、躁うつ病に苦しむ人は、こんなことを考えているんだ!がわかる本】
 「監修」となっているのは、多くの患者からの声をまとめた本だからです。
 「うつ病・躁うつ病」は、肺がんが肺の病気であるように、「脳」の病気です。人間として、性格として、能力として劣る状態ではありません。
 この本は、うつ病・躁うつ病になった人が、どのような気持ちでいるかを、時系列に、症状や復帰、再病休に至る場合などについて説明しています。
 人によって時間軸や悩みはそれぞれですが、ページをめくると思い当たることがあると思われます。
 うつ病・躁うつ病になった人が自分の立ち位置を確認することができる本ですが、この病気にかかった人が身近にいる人にも、「この人は今こんな気持ちなんだろうな」が分かる本です。
 精神疾患に罹患する人が多くなるストレス社会です。病気にならないことが一番望ましいのですが、病気の回復・周囲の人の対応に一読するとよいでしょう。(2021/10/21)