お金のおはなし

○田中学(2023)『きみのお金は誰のため』東洋経済新報社
【初級。経済小説です。小学校高学年のうちに読んでおきたい】

 純粋に小説として読んでも面白い本でした。最後にちょいとお涙ちょうだいです。
 ですが、理論的には貨幣数量説が常に成立する前提で説明して、主人公は納得するものなので理論的にはどうよって感じではありますが・・・。
 お金より大事なモノがあるってことには共感します。小学校高学年の素直なうちに読んでおきたいです。でないと私のようなひねくれ者になっちゃいますので。
 ただ、最後に「愛って、常に時差があって届くんじゃないかな」はちょいとした貨幣数量説の否定にも感じたのは考えすぎでしょうか?贈与の話しもあったので、この言葉は贈与を指していると読むのが正直だと思います。(2024/08/31)

○山本御稔(2021)『経済ってなんだ?』SB Creative
【初級。小学校3年生にも分かるように説明すると帯には書いてありました】

 これもまた新聞の広告欄だけ見て購入した本です。
 死んだ元経済学者のおじいちゃんが幽霊となって孫の前に現れ、会話を通じて経済を解説しています。
 経済って分かってそうで、説明するのは難しいモノです。小学生に説明するのは尚更です。本書の孫は、相当物わかりのいい子だなぁと思いました。私が小学3年生だったらちんぷんかんぷんだったかもしれません。本島に子どもに説明するのであれば本書を参考に、大人と一緒に読むといいと思います。
 基本的に「~ってなんだ?」で章立てがなされているので、何を説明しているのか迷うことはないと思います。分かりやすく説明していると思います。(2024/02/09)

○原田ひ香(2021)『三千円の使いかた』中央公論社
【初級。小説でした。私がタイトルだけ見て本を買っているのがバレバレです】

 ええ、私は新聞の下にある広告欄で「これは!」という本を買っているのです。試し読みすらしません。なので本書のようなタイトルを見せつけられると、買ってしまうのです。まぁ、電子版ですが。小説としてなかなか面白かったですよ。
 6章立てで、ひとつの世帯ですが、それぞれ異なる立場で生活感をばっちり表現しながら、ちょいとお金の話をちりばめた本です。主人公のすべてが女性だったので、女性ってこんなん考えるのね、と思いました。おばあちゃん世代、父母世代、子ども世代がそれぞれ直面する事態とお金について考えさせられる内容になっています。おばあちゃん73歳でハローワークに行った。はたまた熟年離婚を考えさせられた。お金ってついてまわるよね。たまには人生に影響を与えてしまったり。でも本書は、「それでも自分は自分!」、かけがえない自分の人生はいつでもやり直せるから頑張ろうです。でもお金って大事よね。私は悟りきれません。フフフ。(2022/09/10)

○David W. Bianchi (2015)『Blue Chip Kids : What Every Child (and Parent) Should Know About Money, and the Stock Market』John wiley & Sans
デヴィッド・ビアンキ(訳:関美和)(2016)『お父さんが教える13歳からの金融入門』
日本経済新聞出版
【初級~中級。日本寄りに訳されているので分かりやすいですが、ベースはアメリカです】

 たまたま筆者が男性で、たまたま息子が男性だったので、そんな感じで金融市場、取引について説明口調で書かれています。和訳はとても上手になされており、必要に応じて日本の状況も触れているので、和訳を読んでいいと思います。この本でビックリなのは、金融大国と思っていたアメリカでも、金融教育はまだまだと評価している点です。日本はさらに遅れているとは思いますが。
 とは言え、やはりアメリカの本なので、13歳にはちょっと難しいかもしれません。こんな感じは目次を熟読し、内容はさらっと流しで読んで、下の山崎(2021)やたけや(2021)を読むといいかもしれません。ただ、税金についても書かれているのは、誠意を感じます。(2022/06/02)

○山崎将志(2021)『父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。』日本経済新聞出版
【初級。中高生対象とした本です】

 結論を書いてしまうと、重大な営業妨害になってしまう本です。最後の最後は、な~んだ、な感じですが、単なる株式投資、投資信託の投資だけではなく、就職を考えたら~、ということも考えさせる本です。結構ストレートな言い回しがありますが、まぁ分かりやすくしたと目をつぶりましょう。
 お父さんが2人の中高生の子供に講義している体裁です。実際そうだったんでしょう。
 自己を過信せず、忍耐強く、そして人類の可能性に期待するという言葉は胸に響きました。
(2022/04/01)

○荻原博子(2021)『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』大和書房
【読む必要はありません。時間と本代の無駄です】

 私が読みたいと思う本は、新しい知見を見せてくれたり、新しい可能性を見いだしてくれる本です。ところがこの本は、「投資信託をしてはいけない」、「NISAを活用してはいけない」といった否定形の文章がたくさんあるマイナスオーラたっぷりです。
 また、本書の基本スタンスは、「金融リテラシーの低い下々の者は、銀行預金を積み上げておけばいいんじゃね!まぁ、火災保険と自動車保険、そして最低限掛け捨てインターネット申込型の生命保険はいいけどね」です。「リスク回避と手数料極悪主義」と言ってもいいと思います。
 でも現代は、リスクを回避する技術よりもいかにリスクをうまくコントロールするのかという技術が求められているし、コストに対して正当な対価(手数料等)を取るのは当然の社会です。(金融機関が慈善団体だったら話は別ですが)。
 それに本書では、生命保険会社が倒産した場合については説明がありますが、銀行が破綻した場合の説明はありません。銀行が破綻した場合、決済用預金以外の元本1,000万円を越える部分とその利息等は、カットされる場合があります。まぁ、本書が対象にしている読者は、元本1,000万円も貯められないだろうと、著者は考えているかもしれませんね。
 それに精神障害で働けなくなった場合、障害年金がもらえる「かも」しれないと簡単に記載されていますが、精神障害の障害年金支給要件はかなり厳しいです。単に療養が長期に渡って、収入がなくなったというだけでは受給できません。精神障害2級でも難しいです。私がそうですから。
 正しい金融リテラシーがあれば、本書はツッコミどころが満載です。ですが、この書評を読んでくださる方には、リスクを回避するのではなく、リスクをうまくコントロールする本を読んでいただきたいと思います。どら、速攻で売っぱらうとするか。(2022/03/07)

○たけやきみこ(2021)『子どもの一生を決めるおうちお金教育』KADOKAWA
【初級。子育て世帯に贈る子育てとお金の教育の関係を分かりやすく説明する一冊】

 ファイナンシャルプランナーでもある著者が、自身の2人の子育てとお金の教育の関係について紹介する本です。
 家庭でもなかなかしにくいお金の教育ですが、幼少期から中学生にかけて、段階を踏んでどのような教育をしてきたか説明しています。
 もちろん各家庭の金融資産や住居形態でお金のあり方は変わりますが、現代はこれまで以上にお金の教育は必要です。特に重要なのは子育て=親育てである点です。成長するのは子どもだけではなく、親も同様に成長する必要があります。
 お金は、そもそも契約と信用から成り立ちます。子どもに契約(約束を守ること)と信用(親は子どもを信頼し、子は親を信頼する関係)の大切さをお金を通じて伝えていくことです。
 本書は、各章の最初に説明があり、エピソードをマンガでハートをつかみ、エピソードごとにまとめがある、という流れになっています。
 みんながみんなマンガのように育ってくれるかは親次第。子育てのひとつのツールとして、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。(2021/10/16)