株式投資・信用取引

○山本隆行(2022)『伝説の編集長が教える会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』東洋経済新報社
【初級。無駄のない文章で簡潔にまとめてあるいい本です】

 書店に並ぶ本のうち、辞書を除いて角で殴れば殺人道具になるほどのボリュームのある会社四季報。なにやら小さい字でたくさんの数字が並ぶ本ですが、その企業をコンパクトにまとめた株式投資をする人のバイブルです。
 この会社四季報を今まで漫然と眺めていましたが、本書は会社四季報の読み方を分かりやすく説明しています。タイトルには「ココだけ」と書いてありますが、読了後付箋だらけになりました。株式投資は人それぞれスタイルがあるので、自分に合うと思われるところをトコトン追求するといいでしょう。私のように「全部」を取り込みたい欲張りは結局全てのデータを見ることになります。中には前号、前々号を読む必要がある箇所もあります(四季報オンライン検索を勧めるところもあります)。
 もちろん全部を読み尽くす頃には次の号が発売されることになりかねないので、自分流の四季報の読み方が必要です。本書はその手引きになりそうです。(2024/09/21)

○朝香友博(2021)『日本一カンタンな日米10倍株をつかむ本』クロスメディアパブリッシング
【初級。スクリーニングはとても参考になる】

 カンタンに儲けたいですよね。よく雑誌で「PERでお値打ち銘柄」「低PBR銘柄」といったランキングが掲載されていますし、なかには「テーマ別!買うならこの銘柄!」のような特集が掲載されていることがあります。下にちっちゃく「投資は自己責任で」と注意書きがありますが。そうカンタンに儲けることなんてできません。
 本書も「カンタン」とありますが、根気がいります。楽天証券かSBI証券のスクリーニング機能を使って、具体的な設定を教えてくれるのは大変ありがたい。その結果で出てくる300銘柄から四則演算して探しなさいってことです。カンタンですが根気がいります。暴落した昨日のスクリーニングでも150銘柄出てきました。土日が必要です。
 スクリーニングの方法以外でも必要となるデータなどの紹介があります。駆使しましょう。最後のページはお薦め銘柄がありますが、これは出版当時のモノ。参考程度に見てください。
(2024/09/05)

○大江加代(2023)『新NISAとiDeCoで資産倍増』日経BP
【初級。新NISAに取り組む前に読んでおきたい本】

 著者はiDeCoについて、厚生労働省社会保障審議会企業年金・個人年金部会の委員、新NISAについて、資産所得倍増分科会の委員として制度設計に携わっていることから両制度の思想的なことから学べる本です。巷にあふれている、具体的な株式、投資信託の関連本とはちょっと趣向が異なりますが、本書を通じて両制度の使い方を学ぶことができます。私も両制度の活用の仕方を考え直すいい機会になりました。
 もちろん税制優遇や世代に応じた両制度の使い方(似て非なる使い方になりそうです)についても説明しています。
 本書を通じて制度の根っこを勉強してから、巷にあふれる具体的な銘柄を推奨する関連本を読むといいでしょう。(2024/01/03)

○バートン・マルキール著、井手正介訳(2019)『ウォール街のランダム・ウォーカー
(原著第12版)』日本経済新聞出版
 Burton G. Malkiel(2019)『A Rundom Walk Down Wall Street』Norton & Company. Inc
【中級。結論はとても簡単でそれを立証するために膨大な文章を読むことになるけど勉強になる】

 メインの結論は原著初版から説明しているインデックス運用をこつこつ続けることなんですが、ここにたどり着くためにたくさんの文章を読むことになります。でも歴史や各種指標を検討しているので大変ためになります。本書の有名な一言は、アクティブ運用する投資信託の成果とサルが新聞の投資欄に適当にダーツを投げて選んだ銘柄のポートフォリオの成果があまり変わらないということでしょうか。
 本書の根底の考え方は、基本的に株価はその時々の情報を反映するけど、5分後や1週間後の株価は分からないということです。個人的にはその時々の情報を反映しているとは言えない気がします。私の投資なんてサルレベルですから。そんな輩の投資行動がすべての情報を反映しているとは思えませんし、小型株に至っては会社四季報のその会社の担当者しか情報を適切に扱えるようには思えません。
 でも結論は本書といっしょなんですね。メインはインデックス投資が中心で、個別株は適当に、ランダムウォークで、「あっ、買い!」(なぜか売りだけは指値)ですね。そんなランダムウォークの株投資がインデックス投資の成果と比較してどうかは不明です。小遣い稼ぎの楽しみです。まっ、そこそこ儲かっていると言っておきましょう。
 本書が12版まで重版したのは、経済上のイベントがあったことと新しい考え方が出てきてその考えを考察したからということです。最近の考え方には少し共感している点があるようなので、その根拠を読むのも楽しい一冊です。秋の夜長にどうでしょうか。(2022/09/04)

○松本大(2021)『今日から始める!米国株投資超入門』東洋経済新報社
【初級。米国株だけでなく、国内株投資にも役立つ本です】

 基本的にマネックス証券を使ってね、たくさんサービスしてるから!を前提に作られている本なので、その部分については「あっそう。そうなのね」でいいとして、米国株も日本国内株も基本は同じです。日本株はだいたい100株単位で取引されるのに対し、米国株は1株単位で取引ができるなど、少々違いがありますので、そのことを意識するといいでしょう。あとは基本的な株取引で知っておきたいこと、米国の重要な統計(その多くは日本株でも重要な統計です)そして税金・NISAについて説明しています。私も米国株の取引をしていますが、日本株よりダイナミックに動くので、妙味があるのは確かです。(2022/05/09)

○土信田雅之(2017)『ど素人でも稼げる信用取引の本』翔泳社
【初級。一通り現物取引をして、さて信用取引しようかな、で読むと良いでしょう】

 信用取引の基本についてテクニカルの面でも制度の面でも分かりやすく説明されています。メリットは掲載されていますが、デメリットにはあまり触れていませんが、メリットの反対と考えればいいでしょう。正直に中短期の取引であるとして、テクニカルにもページを割いており、また、ちょいと難しいこともできるだけ分かりやすく書いてあります。逆日歩とか。少し上級向けには「応用編」として説明していますので、心して読みましょう。全体的に読みやすい本です。現物取引オンリーの方向けの情報提供もあるので応用できます。役に立ちます。(2022/05/02)

○高橋慶行(2019)『12万人が学んだ 投資1年目の教科書』かんき出版
【初級。平易で読みやすい。初心者向け。取引開始時に読むと良いでしょう】

 多数の金融関連の講師を招き開かれている「投資の学校」の創業者による著書です。これまで開かれた講義をギュギュッと初心者向けにまとめた本です。この書評では、「株式投資・信用取引」の項目で書いていますが、FX等その他の取引にも活用できるとしています。ファンダメンタルズに基づく長期投資よりは、チャートを読み込むことでトレードするスタイルと推奨しているので、中~短期投資と相性がいいのかなぁと思いました。初心者としての心構えも書いてあり、チャートの見方も詳しいので読みやすい本です。それといかに自分が適当かも分かりました。フフフ。
(2022/04/17)

○石井勝利(2019)『株の鬼100則』明日香出版
【中級。「デイトレ」同様、文章は平易だが、内容を理解するには実際の株式取引経験が必要】

 「デイトレ」と同じ著者による「鬼100則」シリーズの1冊です。順序としてはこちらの方が先。
 「デイトレ」と同様に、各種指標(PERやPBRといったもの)やチャートの説明はなく、著者の経験に基づく心構えを中心に論じています。長年の経験則なので、株式の取引経験があると、「うん、分かる分かる」という内容なので、軽くでいいので株取引をしてから読んでみましょう。
 本書でも、とにかく押し目買い、利益確定、いったん休止を推奨しています。
 従来の考えとは異なる点も参考になります。(2022/03/01)

○石井勝利(2020)『株「デイトレ」の鬼100則』明日香出版社
【中級。文章は平易だが、内容を理解するには実際のデイトレ経験が必要】

 明日香出版社の「鬼100則」シリーズの1冊です。
 通常デイトレードの説明書は、MACDやRSI等チャート分析等の指標や財務諸表等に紙幅を割くことが多いのですが、本書は、著者の経験に基づき5分足のチャートと板の読みこなしやデイトレードの心構えを中心に論じています。ひとつのテーマを見開き2ページにまとめられていて、読みやすいです。しかし。内容を真に理解するには、実際にデイトレードをしてみないと分からないというのが感想です。
 デイトレードでは信用取引を活用することが多いですが、著者は信用取引の特徴である「売り」からのトレードはオススメしていません。とにかく押し目で買い、素早く利益を確定することを推奨しています(私も同感です)。
 現在の株取引は実際に取引をしてみると不自然な売買注文(多くはアルゴリズム。しかも大量)が見られ、個人投資家には、不利な状況だと言えます。本書は、そんなチャートや板の向こう側の存在と対処法を教えてくれる本です。(2021/10/10)